:::【観戦記事】 『ASIA VINTAGE CHAMPIONSHIP 2018 TRIAL』 第4回戦:宮薗 猛(チームモルティンレイン) vs. 鳥海 貴(日本煙突協会/久喜組)

By Yohei Tomizawa


 サイドイベントとして開催されている『ASIA VINTAGE CHAMPIONSHIP 2018 TRIAL』。こちらは8月の18、19日の二日間に渡り開催される『ETERNAL WEEKEND Asia 2018』の不戦勝をかけた戦いだ。

 最終第4回戦のフィーチャーマッチは2勝1敗の宮薗 猛と3戦全勝の鳥海 貴


 宮薗 猛は神挑戦者決定戦の常連だ。『第6期及び7期レガシー神挑戦者決定戦』、『同ヴィンテージ神挑戦者決定戦』の計4回でトップ8に残っており、レガシーでは“美しすぎる”「マーフォーク」を、ヴィンテージでは「メンター」と青を基調としたデッキを好んで使用している。19位で終えた『グランプリ・京都2015』でも相棒に選んだのは「マーフォーク」だった。

 好成績を残す宮薗であるが、『第7期ヴィンテージ神挑戦者決定戦』では決勝戦においてHareruya Prosの原根 健太に、『グランプリ・京都2015』ではトップ8を決める最終バブルマッチで同じくHareruya Prosの高橋 優太に敗北し、ネクストステージを逃している。今回こそ、最後の1勝をもぎ取ることができるだろうか。


 対照的に鳥海 貴は『第11期ヴィンテージ神挑戦者決定戦』を見事勝ち抜き、遂に神飯野 彬への挑戦権を獲得している。一つのトーナメントを勝ち抜き、ネクステージへの切符を手にした姿はまさに昇り龍。

 『ASIA VINTAGE CHAMPIONSHIP 2016』本戦出場、『BMO Vol.10 ヴィンテージ』、『第10期ヴィンテージ神挑戦者決定戦』でトップ8に残っている。デッキは「Omni Oath」や「MUD」…いや「日本煙突協会」と様々なアーキタイプを使い分ける。


 『ETERNAL WEEKEND Asia 2018』は、もう目の前に迫っている。最終戦を勝ち、自力で優勝を決めるのはどちらのプレイヤーか。

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:ゲーム1

 マリガン後ということで、宮薗は土地が多めの手札を渋々キープ。《Volcanic Island》を置くだけで終わるが、鳥海《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》から《Volcanic Island》をフェッチし、《定業/Preordain》をプレイ。その手には《Ancestral Recall》が握られており、仕掛け時を探るといったところか。

 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》を置くと宮薗《思案/Ponder》で思案し、シャッフルを選択。Mox Sapphire》を置くと、続くターンには《定業/Preordain》で更に掘り進めるが、エンドに鳥海がキャストしたのは《Ancestral Recall》宮薗《精神的つまづき/Mental Misstep》はなく、新鮮な3枚のカードがもたらされる。

 鳥海は獲得したハンドアドバンテージを盤面の脅威に変換する。すなわちMox Jet》《Mox Emerald》でマナ差を逆転すると、《Demonic Tutor》から導かれた《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》ドルイドの誓い/Oath of Druids》を揃えプレイグラウンドへ!

 宮薗は自身のターンで《意志の力/Force of Willをドローすると、《実物提示教育/Show and Tell》をカウンターのバックアップで無理矢理通し、《グリセルブランド/Griselbrand》を着地させ逆転を狙うも、鳥海が出したパーマネントもなんと《グリセルブランド/Griselbrand》

 一先ずペイライフから手札を得るが、求めるカードはないのか更に7枚。残りライフを4としながらも《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》をX=0でキャスト。鳥海もスタックして7枚のカードを引くが、これを許可。《Library of Alexandria》をセットすると大量のディスカードとともにターンが移る。

 アップキープにドルイドの誓い/Oath of Druids》が誘発し、《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》までも出現。今度は鳥海がカードを切っていく。《ダク・フェイデン/Dack Fayden》Mox Sapphire》を奪うと、更にペイライフ。ライフ1ながらMox2枚を追加しながらの《Time Walk》とパワー9の乱れ撃ち。

 ここで解決を許せば、《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》により勝負が決してしまう。宮薗《意志の力/Force of Willで応じ、《グリセルブランド/Griselbrand》同士が交換される。

 《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》を対処しなければ宮薗に未来はない。ドルイドの誓い/Oath of Druids》にスタックして《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》を起動し、大量のMox共々トークンを一掃するが、鳥海も解決後に《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》で再度トークンを生成し、クリーチャーの着地を許さない。

 《Ancestral Recall》《精神的つまづき/Mental Misstep》が撃ち込まれ、宮薗は投了の代わりにカードを片付けた。

宮薗 0-1 鳥海


:ゲーム2

 悩みながらキープを宣言した鳥海《Black Lotus》が解決されたのを確認すると、Mox Pearl》で4マナ目を確保。なんと後手1ターン目に《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》

 着地してしまえば、ゲーム自体を決めかねない。宮薗《宝船の巡航/Treasure Cruise》をコストに《意志の力/Force of Willを放つが、鳥海の手札は完璧だった。《実物提示教育/Show and Tell》を切っての《意志の力/Force of Willでカウンター合戦を制してみせたのだ!

 かくて神は降臨し全自動《渦まく知識/Brainstormから《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》セット。

 宮薗《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》を置き、鳥海の行動を見守るしかない。

 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》《渦まく知識/Brainstorm効果とフェッチランドのシナジーで、新鮮なドローを繰り返す。3度目には遂に宮薗のデッキトップへの検閲が入り、《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》がボトムへと送られる。

 宮薗は静かに時を待っていた。4枚目の土地として《Library of Alexandria》をセットすると、遂に動く。鳥海に遅れること3ターン、キャスト《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》

 この《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》がカウンターされれば、試合終了となってしまう。鳥海の動向を見つめると、レスポンスで《渦まく知識/Brainstormをキャストしながらもスルー。すかさず3枚の手札を加える。

 両者《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》着地という異様な光景。しかし鳥海のそれは3度多く能力を起動しており、《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》によりスピリット・トークンも得ている。3枚のカードを引くと、相手の忠誠値を2に下げる。

 ここからは宮薗《渦まく知識/Brainstormを使いながら《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigyをブロッカーとして召喚、対して鳥海がバウンスしつつトークンで忠誠値を減らすという動作が繰り返され、宮薗《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》の忠誠値は1となってしまう。

 検閲により忠誠値を上げ《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を維持することは可能だが、宮薗は潰されることがわかっても真ん中の能力で手札を増やし続け、《Library of Alexandria》の起動までこぎ付ける。

 返すターンで遂に《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》はスピリットによって堕ち、再び神を持つのは鳥海のみに。一度検閲により忠誠値は引き上げられていたことが大きいようだ。

 しかし宮薗《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を潰すため、3ターンに渡りブロッカーたる《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigyをバウンスし続けた結果、手札の差はなくなってしまう。

 新たなプレッシャーとしてドルイドの誓い/Oath of Druids》選択すると、鳥海《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》をコントロールしており確実に起動は見込める。手札は5枚と若干少ないながらも未だイニシアチブを握っているか。

 宮薗は《ダク・フェイデン/Dack Fayden》を唱え、手札をルーティング。そして勝負とばかりに《実物提示教育/Show and Tell》をキャストする。

 一体、何だ。《グリセルブランド/Griselbrand》《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》か、はたまたカウンターを引き出すためのブラフなのか。鳥海は思考の海に沈み、予感めいたものが浮かんでは消える。じっくりと考え、解決を許可する。

 じっと耐えた。「く、〇せ。」「九分九厘決まってるのになんで続けてるんだろね。」と笑いながら口にした宮薗本人も、開始当初からいた観戦者の多くも“終わった試合”と位置付けていたかもしれない。

 それでも諦めずできることを続け、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》着地にこぎつけ、鳥海のドローがあまり良くないことも相まって、遂には《実物提示教育/Show and Tell》を通すことにも成功した。さあ、いこう!

 カードを伏せるのは、宮薗のみ。表に返すと《全知/Omniscience》と明らかになり、すぐさま《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》をキャスト。これにはポーカーフェイスを貫いていた鳥海も「いかれたなぁ。」と。

 エクストラターンに入ると《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》へアタック。たまらず《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を滅殺の生贄分に含め、生命線のドルイドの誓い/Oath of Druids》を守る。

 守ったドルイドの誓い/Oath of Druids》から《グリセルブランド/Griselbrand》が出たことでペイライフを重ね、手札とマナを増やすと鳥海《実物提示教育/Show and Tell》キャストする。

 宮薗がとっときの《意志の力/Force of Willを切ると、鳥海《紅蓮破/Pyroblast》を合わせるが、更にキャストされる《意志の力/Force of Will

 「無理だね。

 敗北を認め、ゲームカウントはタイに。

宮薗 1-1 鳥海


:ゲーム3

 熱戦が続いたためジャッジに確認すると、残り時間はなんと4分。マリガンの鳥海《Tropical Island》から《定業/Preordain》を唱え、すぐさま2枚を下に送る。

 対して宮薗《Black Lotus》をプレイし、解決すると生贄にささげを宣言。

 「白?

 鳥海を含め、観戦者の多くに疑問符が浮かぶ。

 キャストするのは《先駆ける者、ナヒリ/Nahiri, the Harbinger。ルーティング能力だけでなく、奥義でクリーチャーに速効を付与しつつ場に出すため、残り時間の限られたこのゲームではフィニッシャーにもなりそうだ。当然許すわけにはいかず鳥海《精神的つまづき/Mental Misstep》をコストに《意志の力/Force of Willをキャストするが、宮薗《ダク・フェイデン/Dack Fayden》を犠牲に同じカードを合わせる。

 更に間の悪いことに鳥海の土地は1枚でスットプし、《Black Lotus》を出しながらもルーティングを見守るのみ。

 《先駆ける者、ナヒリ/Nahiri, the Harbingerの強さの一つに奥義への到達の早さがある。僅か2ターンで到達すると、鳥海のアップキープに《禁忌の果樹園/Forbidden Orchard》から《自然の要求/Nature's Claim》で美しい水連を対象にとる。

 ここで時間終了を告げる声が聞こえ、鳥海から延長ターンがスタート。《Black Lotus》を割られ、土地も引かずターンを返すしかない。この時点で鳥海が勝利することはほぼ不可能となり、後は宮薗が決められるかどうかといったところか。

 一方宮薗も実は土地が2枚でストップしており、ドローを進めるが引かない。トークンの2体目を生み出し《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigyを召喚し、《先駆ける者、ナヒリ/Nahiri, the Harbingerを守るブロッカーとする。

 延長3ターン目に入ると召喚酔いの解けた《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigyを変身させ、奥義で《グリセルブランド/Griselbrand》を着地させると、限界までライフを支払う。

 「引かないことを祈るのみだな。

 Moxでマナを確保すると《実物提示教育/Show and Tell》から《全知/Omniscience》
ゲーム2を思い出し鳥海は、

 「エムラ(《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》)いますか?

 と問いかけるが、

 「まだないです。

 と答え、宮薗はドロースペルを連打。《Ancestral Recall》《定業/Preordain》《時を越えた探索/Dig Through Time》で軽く10枚以上掘り進めるが、目的のカードに巡り合えない。未確認のパイルは約20枚ほどあり、残りのドロースペルの総量的に引けるかどうかギリギリ。

 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》《ダク・フェイデン/Dack Fayden》のプレインズウォーカーコンビを並べ、最後とばかりに《宝船の巡航/Treasure Cruise》をキャスト。カードを手元に伏せる。

 1、2、3。祈るよう確認すると…真実に辿り着いた。

宮薗 2-1 鳥海

 厳選なオポ勝負の結果、『ASIA VINTAGE CHAMPIONSHIP 2018 TRIAL』を制したのは、

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 宮薗 猛

宮薗 猛、『ASIA VINTAGE CHAMPIONSHIP 2018 TRIAL』優勝おめでとう!